八雲「播磨さんを家に呼んだ」
前のやつ
播磨「そろそろ新しいアシスタント募集するか」 八雲「えっ!?」
http://rapport-analysis.com/2016/10/post-9447/
※播磨と八雲は付き合ってる設定
八雲「播磨さん、こんにちは」
播磨「おう、妹さん。邪魔するぜ」
八雲「今日は我が家だと思ってくつろいでくださいね」
播磨「そうか? わりーな、絃子のとこなんかよりここに永住したいくらいだぜ」
八雲「は、播磨さん……まだそういうのは早いというか……」
播磨「じょ、冗談だって! ……俺が漫画の印税で今以上にいい家買うからそれまでは待ってくれよな」
八雲「……あ、あの……はい……」カァァッ
八雲「それが姉さんは先輩たちと旅行に行くから数日は帰ってこないって……」
播磨(すると何だ? ……妹さんと二人きりか? ……やべえ、前は全く気にならなかったのに、付き合い始めて意識すると緊張するな)
八雲(播磨さん……)
播磨(まあ泊まったりする訳じゃねーし大丈夫か)
八雲「あ……えっと、その……デートをしようと思って」
播磨「そ、そうか。だけど俺なんも用意してねーぞ?」
八雲「それは大丈夫です。播磨さんと普段通りの日々を過ごしたいと思ってお招きしたんですから」
播磨「そう? 悪いね」
播磨「おう」
八雲「テレビとか見てて構いませんから」
播磨「おう。じゃあお言葉に甘えて……っと」
テレビ『チャームアップマイマイドリーム! ウワ、アダルトリツタカスギ』
播磨「なんだこのアニメ!? いや、侮るな播磨拳児! なんであれこれはアニメだ、もしかしたら漫画の参考になるかもしれん」
テレビ『マスクカメンサマ! マジカルマイ、キミノオモイハツタワッタ』
播磨「なるほどな、そういうことだったのか」ジーッ
八雲(すごい食い付いてる……好きなのかな、ああいう格好……)
八雲(今度飯田橋店長に相談してみよう……)
八雲「じゃあお昼にしましょう。何か食べたい物はありますか?」
播磨「そーだなー……あ! 妹さん、おにぎり作ってくれよ」
八雲「えっ? おにぎりでいいんですか?」
播磨「ああ、前に妹さんに貰ったおにぎりの味が忘れられなくてよ、また食いてーなーって」
八雲「そんな、ただのおにぎりですから……」
播磨「妹さんが作ってくれるもんなら何だってうまいと思えるぜ」
八雲「え……あ、あの私作ってきますね、おにぎり」
播磨「待て、俺も手伝うぜ」
八雲「えっと……じゃあ、お願いします」
播磨「俺もできたぜ。妹さんのに比べるとちょいと不恰好だけどな」
ヒョイ、パク
八雲「うん、美味しい……料理は心ですから……播磨さんの心、ちゃんと感じます」
播磨「本当か! よかったぜ、妹さんに喜んでもらえて」
八雲「播磨さんも私が作ったおにぎりをどうぞ」
播磨「おう……相変わらずうめえな、妹さんのおにぎりはよ。……妹さんの愛が詰まってるからかな、ははははは」
八雲「そうですね……私は播磨さんの事、好き……ですから」カァァッ
播磨「そうか……」
八雲「はい……」
播磨(なんだこの沈黙)
八雲「そうですね」
播磨「妹さんは休みは普段何してるんだ?」
八雲「家事をしたり、姉さんとお話ししたり、テレビを観たりでしょうか」
播磨「あまり遊んだりはしねーのな」
八雲「そうですね、休みはバイトが入ってることも多いですし……あ、そういえば播磨さんは原稿の締め切り大丈夫なんですか?」
八雲「そんな! やりましょう、すぐに」
播磨「すまねえな、妹さん。残ってんのは数ページで、すぐ終わらせるからよ」
八雲「私も手伝います。ここじゃテレビとかあって落ち着かないでしょうから私の部屋へどうぞ」
播磨「まあこの程度すぐ終わるし、このまま寝かせておこう。風邪引いたらいけねえからベッドに移すか」
播磨「……っと、消しゴムがベッドの下に! 消しゴム、消しゴムーっと……何だこれ、紙か?」
播磨「これは漫画だな。妹さんが描いたのか? ……あれ、この主人公とヒロインって……」
ぐるぐるまわる心理
■KC1巻から始まるスクランの世界
スクランの世界に流れる、ディスコミュニケーション性とは具体的にどういうものか。
それは、善意や好意をちゃんと理解して、その感謝の気持ちを本人に返す、という正常なコミュニケーションが稀にしか描かれず、その踏み外しをこそドラマの基点にしていることからも説明できる。
実際に、善意と好意に伴う感謝のシーンをKC1巻から探し出してみようか。初期の段階までなら天満も、単純に行儀の良い子として「ありがとうございます」を条件反射的に言えている(♯03,♯04参照)のだが、その天満に播磨からの好意や善意が絡み出してきた途端、想いのすれ違いが始まる。
♯05では、テスト中の助け船が失敗に終わった(播磨の空想では感謝される図が展開されている)。
♯06では、ラブレターによる好意が理解してもらえたものの、播磨自身は名乗り出せなかった。
♯12では、チカンを退治して感謝されるが、やはり播磨は名乗り出せなかった。
恋愛感情を伴った播磨→天満の関係に限らずとも、例えば♯16の天満は、美琴に「ありがとう! 勇気が出るわ!」と感謝した直後に「ずるいよ 美琴ちゃん 胸 おっきすぎ!!」と筋違いの文句を言って「ぜんっぜん わかってねえ!!」となる。
基本的に、人の話をストレートに理解して受け止められるキャラクターが少ない。それはある意味、当然の人間関係でもある。人は人の考えていることを完全に理解することはできないのだ。
♭01の八雲は、他者の好意を(相手の表層意識を読める能力を持っているのに、もしくは読めてしまうからこそ)理解して受け入れることができないというジレンマの持ち主として描かれる。彼女の発する「……… ありがとう」という言葉には虚しくも実感がこもらない。そして、八雲が身を投げ出す形で落地から守られた(猫なのだから守られずとも多分無事だったろう)猫の伊織は、もしかすると感謝の気持ちを八雲に伝えようとしたのかもしれないが、猫の心の声は「ニャーニャー」としか伝わらなかった。
♭02では、その伊織と似た感情を感じるという播磨修治の心を八雲は読んでしまう。修治の純粋な好意を、八雲はスッと受け入れることができたのだが、仮にも他人の心の内を覗いてしまっているのだから、その感情を口に出して指摘することができる筈もなく、遠回しな態度だけで好意に応えることになる。そして修治自身にしても、その態度は根拠が無い(まさか自分の好意が通じた結果だとは考えがたい)のだから、喜びはすれど、お礼を返すべくもない。感情が言葉にならない。■ディスコミュニケーションを前提にしたコミュニケーション
KC8巻♯100や♯141で天満が、KC9巻♯116で沢近愛理が、播磨に向かって言った「ありがとう」のように、謝意を返された側が素直に言葉を受け取れないという、ズキリとする表現もまた、スクランは多い(お礼されるようなことじゃない、そんな資格は無い、といった類の)。相手に対して秘密を隠し持つなど、懐に一物を抱えたコミュニケーションによって、そうした齟齬の数々は際限無く生まれていく。
八雲のワンウェイな(読心のみの)テレパシー能力は、スクランにおけるディスコミュニケーション性を象徴するもので、その障害(作中でいう「枷」)故に裏主人公の役を担っているようにも思える。
彼女にとっては、姉の天満ですらすれ違いの多い存在であって、心が視えない時の天満は八雲でも行動が読めないし、天満は八雲の理解者ではあるが、彼女の「枷」まで理解してはいない。互いに向けた愛情が強いということは確かでも、通い合ってはいないのだ。またKC2巻♭03では、サラ・アディエマスに向けて一度言いかけた感謝の言葉が言い切れず、後でか細く言い直すということがあったが、前後共に感情を伝えきれていない。そんな八雲が、相手の善意を汲み取った上で、きちんと「ありがとう」と告げることができたのは、猫の伊織だけ(KC10巻♭29参照)だという事実が何とも切ない(ただ、彼女は播磨から感謝を受け取るというシーンが多く、特徴的な関係を育んでいる)。
そもそも、天満の想い人である烏丸は、八雲同様か、それ以上のコミュニケーション障害を抱えた人物として描かれている。フィクションの登場人物に心理学用語をあてはめようとする行為はヤボと思われるかもしれないが、軽度の高機能自閉症(アスペルガー症候群)をコミカルにした性格だという見方をしても良さそうな人物である。烏丸程の変人ではないにしろ、近しい障害を抱えた人間は多いものだろう。
そこで天満を主人公としてみなした場合、彼女の目的意識はただ烏丸に告白するだけには留まらない。烏丸の理解者となり、彼とのコミュニケーションを成立させることもまた、天満にとっては目指すべきゴールとして設定されているように思える。少なくとも、天満自身の意識の上ではそうだろう。
物語の中で間断的に挿入される、天満と烏丸のコミュニケーションを追うことでもそれは確かめることができる。あらましを表にして順番に並べるとこうなる。(→クリックして別ウインドウを開く)
天満の献身的な努力はちょっとやそっとのものではない。特にKC8巻「描き下ろしオマケマンガ その3」を境にして、天満の「烏丸を理解しよう」という態度は勢いを増し、果敢なものになっていく。KC7巻♯95で播磨が口にしていた「つきあうって コト」の世界に向かって歩を進め、播磨以上の──おそらくスクランの登場人物の中でも際立った──成果を上げているキャラクターが天満その人である。完全には分かり合えないとしても、少しでも相手とのミゾを埋めようとする天満の行動は、内向的な烏丸が相手なだけにヒロイックに映る。そういえば播磨は、天満に理解してもらおうとガムシャラな努力をしたことはあっても、天満の内面を理解しようとしたことはあまり無かったのではないだろうか。
八雲や烏丸とは反対に、察しが良くて相手を立てることのできる性格の美琴は、その逆位置の問題を象徴しているようにも思える。
KC4巻♯54の回想シーンにおいて、プライドの高い沢近は美琴のお節介に対してお礼を言う機会を逸しているが、それ故に沢近は美琴への好意を深めていると言える(お礼を言えないことによって一種の「ツケ」を貯めてしまう心理については後述)。その後、美琴に向けた沢近の「アンタを フる方が 馬鹿なのよ…」という慰めは、回想時に思い出した心のツケを返したものと言えるが、その沢近の心理を知ってか知らずか、対する美琴は「ありがと」と素直に感謝していた。同じ花火の景色を眺めて、無言で気持ちを通い合わせるという描写も、スクランの世界では異彩を放つ。
美琴はKC3巻♯31で播磨に礼を伝えている他にも、KC6巻♯82では今鳥に、KC11巻♯132では麻生にも謝意を伝えられている。しかし、その瞬間に「想い」は殆ど「精算」され、むしろ後に続かない関係を作ることになる。
美琴は物分かりが良すぎる為か、失恋の経験がトラウマになっている為か、自分自身の気持ちを育てて表現することが苦手で、受け身に回りがちな性格になっているように思える。受け止めるのは上手でも、積極的にはなれないという問題がある。
ひょっとすると実は、最もスムーズに気持ちを通じ合わせているのはエロ会議や水着ずもう班の面々かもしれない(KC5巻♭14,11巻♭32、13巻♯155など)。他にも絃子と笹倉葉子の女教師二人は気の通じた仲として描かれることが多い(KC5巻♭14,6巻♭19など)し、さつきとララは気持ちを重ねられてもいる(KC11巻♯130)。しかし彼らはメインエピソードの外側に立つ存在なのだ。http://www1.kcn.ne.jp/~iz-/man/school03a.htm
播磨「妹さん!」ガシッ
八雲「は、はい!」
播磨「俺は感激したぜ! まさか妹さんがこんなにも想ってくれてるなんてよ」
八雲「え? あの……あれは私の漫画!? 見ちゃダメ!」バッ
播磨「速っ!?」
八雲「テレビでも観ましょう。今日は五時から三匹の再放送がやりますよ?」
播磨「お、そういえば」
八雲「テレビ見えない……」
八雲(播磨さん、姉さんみたい……)クスッ
播磨「いやあー、やっぱかっこいいよな万石。痺れるぜ!」
八雲「伊織! どこ行ってたの?」
播磨「お、伊織も万石ごっこやるか?」
八雲(!? 止めなきゃ……!)
播磨「あー……それなんだがよ、外に食べに行こうぜ」
八雲「え……?」
播磨「妹さんがねてる間に店は取っておいたからよ」
八雲「じゃあ、準備してきますね」
嵯峨野「あ、播磨君。こっちこっち!」
播磨「お、悪いな」
嵯峨野「いいって。今日は大事なお客様だからね。急に電話がかかってきたのにはびっくりしたけどね」
播磨「前に塚本がお前が割烹料理屋の娘だとか話してたからな。あんたの電話番号聞いたら浮気を疑われて大変だったんだぜ」
嵯峨野「あはははは、天満ちゃんは思い込み激しいからねー。まあ今日はゆっくりしてってよ。クラスメイトのよしみでサービスするから」
播磨「おう、サンキューな」
播磨「俺や塚本のクラスメイトだよ。妹さんも何度か顔合わせてるだろ?」
八雲「はい。でもいいんでしょうか、このお店なんか高そうですけど……」
播磨「心配すんな! 金の事は俺に任せて、妹さんは食事を楽しんでくれ。お、来たぜ料理」
八雲「美味しそう……」
播磨「いや、妹さんのもてなしにゃあ敵わねーよ」
八雲(普段通りにしてただけな気がするけど……)
播磨「じゃ、そろそろ俺は帰るぜ。あんまり帰りが遅いと絃子に何を言われるやら」
八雲「あ、はい……さようなら、お気をつけて」
八雲(もう少し、一緒にいたかったな……)
『葉子と温泉旅行に行って来ます。一週間後に帰ります。 絃子』
播磨「………………」
播磨「あの女あああ! 鍵掛けて行きやがったあああ!!」
八雲「……あの、播磨さん?」
播磨「こんばんは、妹さん。……泊めて?」
八雲(……やったあ)
終わり
ただ播磨と八雲がお家デートするだけ
八雲が一番好きだけどさがのんも可愛いよね
年下萌えの俺歓喜!
誰かいねーのかよおにぎり派のss書きで今更スクランのss書こうなんていう酔狂なやつは!
昔は知らんが最近で完結したスクランSSはお前だけだぞ。