言えないことの方が多いから、人は書くのだと思う。
パイロットコーポレーション
パイロットのキャッチコピーから得体の知れない何かを感じました。
文房具のブランドを飛躍的に高めるような言葉が素敵ですね。
答えは沈黙……?
ウィトゲンシュタインは言いました。
「語り得ぬものについては沈黙せねばならない」と。
一言二言で想いのすべてが伝わるならば恋愛はとても陳腐でチープなものになると思う。
伝わらないから想像が深まり、より昇華された何かが生まれて行くのかもしれない。
美しさって何なのかってことについて考えました。
柳川堀割物語を知っていますか?
この作品は水の都として知られる福岡県柳川市を縦横につらぬく水路網「堀割」を舞台として、その成り立ちから現代にいたる水辺の暮らしと知恵を紹介しながら、近代化の波におされて荒廃した堀割の再生を目指す住民の闘いを合わせて描いています。
実はジブリで知られる宮﨑駿の個人事務所である二馬力が制作した最高傑作だったりする。
本作を通じて見えてくるローカリズム像は『聖性』である。
柳川が美しかった時、人々は柳川を中心に生活していた。
川の水を毎朝組み上げることから1日が始まり、子どもは柳川から育まれる自然に育てられて大人になっていくように、生活の中心に川という文化の軸が成立していた。
そして柳川に『神』を見出すことで、清掃する者が現れ、協働することで清潔さを保ち続けていた。
柳川はなぜ美しいのか。
それは、『身近なところに聖性を見出しているから』である。
柳川を神と見立て、柳川があらゆる行動原理の中に1つの基軸として成立している。
だから人も町も美しいのだ。
また、ローカリズムにおける神は非効率や非合理性をも受け入れてしまう度量を提供している。
つまり、通貫した基軸が一見して面倒で中途半端な行動も容認して成立させてしまうのだ。
なぜなら、神の宿った行動原理そのものが人々の精神に充足をもたらすからである。
そこに逆説を提供したのがグローバリズムである。グローバリズムは対象に対して聖性を見出さない。
効率と合理性を追求していく『進化』が神であり、言うなれば修正を繰り返すことがそもそもの存在意義なのである。
つまり、グローバリズムは行動によって生まれた結果そのものが人々の精神に充足をもたらすということだ。
柳川が汚れた理由は、人々が柳川に聖性を見出さなくなったからである。柳川の再生を目指す住民の闘いとは、いわば、神の存在証明であると言える。
結果的にボランティア活動という、やはり結果ではなく過程に価値を置いた行動が人々の共感を呼び、もう一度柳川は神となり、柳川はその美しさを取り戻している。
このフィルムには、言葉では言い尽くせない魔法のような美しさが宿っている。
見れば誰もがなぜか懐かしさと美しさを感じずにはいられなくなる。
この作品を見て、朧気ながら美しさとは何なのかが掴めた気がする。
美しさとは聖性だ。聖性が見出された瞬間、そこに美しさが生まれる。
聖性と言っても、神とか信仰心とかそういう話じゃない。
一言で言えば、それは一体感のようなものだ。
ただ真っ直ぐに
一本の道を進むのは美しい
じゃが普通はそうもいかぬもの
迷い、間違い、回り道もする
それでええ
振り返ってごらん
あっちにぶつかり
こっちにぶつかり
迷いに迷った
そなたの道は
きっと誰よりも広がっとる
宮本武蔵は刀に聖性を見出し刀に美しさを求めていく。
本位田又八は人に聖性を見出し自分の人生観に美しさを求めていく。
バガボンドの2人は歩む道は違えど、美しさを感じる。
それは、多分、聖性を見出しているからだと思う。
毎日の生活に聖性を見出すことが出来たらどんなに素敵だろう。
グローバル化が進む中でローカリズムは古いものとして考えられがちだけど…
僕はローカリズムに宿る美しさに可能性を感じています。